東京のタワーマンション市場に異変?―バブルの終わりが見え始めた今

長らく続いていた東京23区のタワーマンション(以下「タワマン」)価格の高騰に、ついにブレーキがかかり始めています。
ニッセイ基礎研究所によると、2024年のタワーマンション価格指数は前年比+25%と大きな伸びを見せましたが、上期(+19%)に比べて下期(+4%)では勢いが大幅に鈍化。価格上昇のピークが見えつつあります。
価格指数3倍超も、鈍化の兆しは明確に
タワマン価格指数は2005年を基準値「100」として算出されており、2024年の指数は「312.4」と実に3.1倍に達しました。これは同期間の新築マンション全体の価格指数上昇(+13%)を大きく上回る水準です。
しかし2024年4月には、東京23区の新築マンション平均価格がついに1億円を割り、9000万円と前年同月比で7%下落。価格上昇に陰りが見え始めたのです。
また、同年下期には千代田区・港区といった都心エリアを除き、豊島区・練馬区・江戸川区などの周辺エリアで価格の下落が確認されています。
中国人投資家の“爆買い”に陰り―海外マネーが引き潮に?
ここ数年、円安に乗じてタワマン価格を押し上げてきた大きな要因の一つが、海外投資家の存在、とくに中国人投資家の大量購入です。湾岸エリアでは、なんとタワマンの3割が外国人の所有というデータもあります。
しかし、中国経済はトランプ政権時代の関税政策の影響を今も引きずっており、2025年に入ってからも工業生産や不動産投資の低迷が続いています。さらに、中国政府は海外投資収益に対する20%の課税を強化。これにより、中国人投資家の“手じまい”が進むと見られています。
加えて、円高の進行もあり、「今が日本不動産から撤退する絶好のタイミング」と判断する投資家が増えても不思議ではありません。
「家賃2.5倍騒動」に見る投資家の本音
最近では、板橋区のあるマンションで、中国人オーナーが家賃をいきなり2.5倍に引き上げようとして問題となりました。7万2500円だった家賃を、19万円にまで引き上げるという通告は、住人を驚かせ、大炎上。
背景にあるのは「日本の賃料は安すぎて投資効率が悪い」という投資家の不満です。実際、日本不動産研究所の調査では、東京・元麻布の高級マンションの賃料水準を「100」とすると、ニューヨークは「281.5」、ロンドンは「266.0」と圧倒的に高い水準です。
家賃を引き上げることで収益性を改善しようとしたオーナーの狙いは理解できなくもありませんが、日本の賃貸市場では受け入れられにくいのが現実です。
タワマン購入者の半数近くは「いずれ売却するつもり」
タワマンを実需で購入している日本人の中にも、将来的な資産価値の上昇を期待している人が多くいます。LIFULLの調査によると、自宅用にタワマンを購入した人のうち45.9%が「いずれ売却したい」と回答。
これは、タワマンの所有が「永住のため」ではなく「資産運用の一環」になっていることを意味します。ですが、もしバブルが崩壊し価格が下がれば、売却どころか「出口なし」となり、含み損を抱えるリスクすらあるのです。
2026年は供給ピークへ―バブル崩壊の再来か
今後の供給状況も気になるところです。2025年以降に完成予定のタワマンは全国で270棟・約9.7万戸に上り、その半分が東京23区に集中。2026年には首都圏で1万9000戸超が竣工予定であり、2007年の供給ピーク時に迫る勢いです。
2007年以降、リーマンショックと価格高騰により、タワマン市場は一気に冷え込みました。現在も当時と似た構図が見えてきており、「タワマンバブルの崩壊」は決して絵空事ではないのかもしれません。
まとめ:タワマン神話に終止符?賢い判断が求められる時代へ
これまで東京のタワマンは「買っておけば儲かる」と言われる資産の象徴でした。しかし、海外投資家の撤退、中国経済の不安、円高傾向、そして過剰供給と、マイナス要因が揃いつつあります。
今後は、「立地が良ければ価格は落ちない」といった神話に頼るのではなく、冷静な市場分析と将来予測が欠かせない時代に突入しているのではないでしょうか。